弱塩基性アニオン交換樹脂から溶出する有機物(TOC)について
純水装置に多用されているイオン交換樹脂は、再生後に素早い水質の立ち上がりが求められ、処理水の水質は主に電気伝導率の連続監視により確認されます。
マクロポーラス型の母材を持つ弱塩基性アニオン交換樹脂は陰イオンの除去性能だけではなく、樹脂そのものから溶出する有機物(全有機炭素、TOC=Total Organic Carbons)も、立ち上がり水質を悪化させるだけではなく、後段装置へ有機物負荷を与えるため、極力低濃度に抑えることが求められます。
倍量再生直後の立ち上り水質変化
代表的な市販のマクロポーラス型弱塩基性アニオン交換樹脂である4製品について、倍量再生直後の立ち上り水質変化、すなわち電気伝導率とTOC濃度の経時変化を確認しました。
処理水の電気伝導率は再生後60分以内にどの製品も1μS/cm以下に下がりました(図1)。
図1 倍量再生直後の処理水の電気伝導率経時変化の比較
しかし有機物(TOC)濃度は通水直後から顕著な差がみられ、当社の製品A103PlusとA100Plusは他社の2製品よりも低濃度であり、20分後には早くも100ppb以下に下がることがわかりました(図2)。
図2 倍量再生直後の処理水のTOC濃度経時変化の比較
一方、他社製品1及び2は、通水開始から120分間経過しても処理水のTOCは100ppb以下を示しません。
再生後のイオン交換樹脂の処理水の電気伝導率を監視することは、短時間で通常運転へ復帰するために求められるケースが多いのですが、TOC濃度も処理水質の評価や後段処理装置への負荷を低減するために、その監視が推奨されます。