課題の解決方法を提案します★廃水の白金族回収に最適なキレート樹脂Puromet MTS9850の紹介

キレート樹脂Puromet™ MTS9850

Puromet™ MTS9850 は、ポリアミンタイプの官能基を保持するポリアクリル系を母材とする弱塩基アニオン交換樹脂です。母材は高い耐久性を持つマクロポーラス・アクリル系であり、廃水から微量の重金属を除去・回収するための優れた交換速度を示し、強固かつ弾力性があるため、高い機械的強度と浸透圧耐性を示します。また特殊な官能基であるポリアミン基は、特に有機物や錯体化合物を含む廃水の重金属や白金族に対して高い交換容量を持ちます。

 

表1 Puromet™ MTS9850 一般物性

ポリマー種別・母体 マクロポーラス型・アクリル系
外観 球状ビード
官能基 ポリアミン基
イオン形(出荷時) 遊離塩基(FB)形
総交換容量(FB形) 2.3 eq/L 以上
水分含有率(FB形) 56 – 63%
粒度範囲 300 – 1,200μm
均一係数 1.7以下
最大膨潤率 FB→Cl 25%
湿潤ビード比重 1.07
見掛密度 670 – 710g/L
耐用温度(FB形) 40°C

 

錯体を形成した重金属を含む廃水処理の問題

Puromet™ MTS9300 や Puromet™ MTS9500 などのキレート樹脂は、一般的に化学処理後の廃水から陽イオンとして溶解している微量金属を除去するために使用されます。しかし安定した有機錯体を形成している金属イオンをこれらのキレート樹脂で除去するのは困難です。特に中性およびアルカリ性の廃水中にEDTA などの錯体形成剤・キレート剤が共存する場合、重金属は非常に安定した陰イオン錯体を形成します。またこれらの金属錯体は生分解処理が難しいことが知られています。

Puromet™ MTS9850 は、廃水中に陰イオン錯体として存在する微量の重金属を除去・回収できる最適な樹脂です。これは樹脂の官能基(ポリアミン基)と重金属の間で形成される錯体の安定性が、水中の陰イオン錯体の安定性よりも高いためで、適切な操作条件がそろっていれば、Puromet™ MTS9850は非常に効率的に錯体を形成した重金属を吸着します。処理廃水の条件は、pHは7-10の範囲であること、通水流量はSV=10(10 BV/h)以下にすることが求められます。

もしPuromet™ MTS9850でEDTA が混在する廃水から重金属を吸着処理した場合、その再生手順は通常よりも少し複雑になります。再生の第1ステップでMgSO4溶液を樹脂に通して、まずEDTAを除去します。このステップは必須ではありませんが、再生効率を改善するために推奨されます。第2ステップでは H2SO4を樹脂に通液して重金属を樹脂から溶離して除去・回収して、第3ステップではNaOHを通して樹脂のイオン形を遊離塩基形に戻します。Puromet™ MTS9850 の金属イオン親和性は、Cu2+ > Zn2+=Ni2+ですが、溶液のpHは7-10の範囲に維持する必要があります。

 

表2 Puromet™ MTS9850 運転・再生条件

運転条件 最適流量:SV4-6 (ただしSV10以下)
pH条件:7-10
樹脂層の最適な高さ:1,000‐1,200mm(ただし900mm以上)
逆洗:6m/h(水温20°C)(展開率50%)
再生条件 第1ステップ

  • 6% MgSO4をSV4で60分間通液
  • 押出:脱塩水2-3BVを30-45分間通水

第2ステップ

  • 10% H2SO4 3-4BVを45-60分間通液
  • 押出:脱塩水2-3BVを30-45分間通水

第3ステップ

  • 4% NaOH 3-4BVを45-60分間通液
  • 押出:脱塩水2-3BVを30-45分間通水

最終ステップ

  • リンス:脱塩水4-6BVを45-60分間通水

白金族金属 (PGM) の回収

Puromet™ MTS9850は、様々な処理水・廃水から白金、パラジウム、ロジウムなどの白金族の効率的な回収を目的とする場合には最適な樹脂です。廃水中の白金族は通常、塩化物錯体や硝酸錯体などの陰イオンとして溶解しているので、弱塩基性アニオン交換基を持つPuromet™ MTS9850は、水中の白金族を効率的かつ選択的に吸着します。この樹脂を利用して、貴金属精錬工程、触媒工程、メッキ工程などから排出される廃水に含まれる低濃度(数ppm)の白金族を吸着し、なおかつ再生して繰り返し使うことで、高い価値を持つ金属資源を低コストで回収・再利用できる技術開発に貢献します。

樹脂が捕捉した白金族は、樹脂を焼却あるいは再生して溶出液を精製することでの回収できます。ただし廃水の組成・濃度などが個別に異なるため、最適な回収条件を得るために事前にラボテストを実行することが求められます。