アルカリ度と硬度
水のアルカリ度は、中和するために添加する酸の消費量です。水のpHが中性領域の場合は、炭酸イオン(CO32-)や重炭酸イオン(HCO3–)の総量を表したもので、一般にMアルカリと呼ばれます。
一方、水中のカルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)を合算した濃度が総硬度(TH)であり、一時硬度と永久硬度に分けられます。一時硬度は重炭酸イオンと結合したカルシウム・マグネシウムイオンであり、水をやかんで沸かすと発生する白い沈殿が一時硬度です。永久硬度は塩化物イオン(Cl–)や硫酸イオン(SO42-)と結合したカルシウム・マグネシウムイオンで、煮沸しても沈殿せずに水中に残ります。
弱酸性カチオン交換樹脂による脱アルカリ条件と軟水装置への適用
脱アルカリ装置に弱酸性カチオン交換樹脂を適用する際に、供給水の総硬度とアルカリ度を事前に測定して把握する必要があります。総硬度がアルカリ度より高い場合は、ほぼすべての重炭酸イオンがCa/Mgと塩を生成しているので、弱酸性カチオン交換樹脂で硬度を下げることができます。しかし総硬度がアルカリ度より低い場合は、Ca/Mg以外の金属イオン(主にナトリウムイオン)が混在し、これらは水酸化物イオンや塩化物イオンの塩として溶解しているので、重炭酸塩しか交換できない弱酸性カチオン交換樹脂では全て除去できません。
脱アルカリ条件としては、アルカリ度に対する総硬度の比(TH/アルカリ度)が0.8以上になっていることが理想です。また模擬水を使用して弱酸性カチオン交換樹脂の脱アルカリ試験や軟水化試験をする場合は、重炭酸塩を添加した模擬水を使用することが大切です。この他にも、水温と流速は弱酸性カチオン交換樹脂による処理性能に大きく影響するので、注意が必要です。
軟水化装置への弱酸性カチオン交換樹脂の適用
弱酸性カチオン交換樹脂に通水すると、重炭酸イオンと結合したCa/Mgを容易に除去できるので、軟水化が進むと同時にpHが酸性側に下がります。酸性処理水(=軟水)に残った重炭酸イオンは二酸化炭素と水に解離します。したがって、弱酸性カチオン交換樹脂(H型)の処理水を脱気装置に通すことで、一時硬度とアルカリ度を効率的かつ連続的に低減することが可能です。
ピュロライト®の弱酸性カチオン交換樹脂Purolite™ C104Plusは、一時硬度とアルカリ度の低減に幅広く使用されています。
表:Purolite™ C104Plus 一般物性
ポリマー種別・母体 | ポーラス型・アクリル系 |
外観 | 球状ビード |
官能基 | カルボン酸基 |
イオン形(出荷時) | H+ |
総交換容量(H形) | 4.7 eq/L 以上 |
水分含有率(H形) | 45 – 55% |
粒度範囲 | 300 – 1,600 μm |
湿潤ビード比重 | 1.19 |
最大膨潤率 H→Ca | 20% |
最大膨潤率 H→Na | 60% |
見かけ密度 | 740 – 780 g/L |