リチウムは最も軽い金属元素ですが、スマートホンや電気自動車に搭載されるバッテリー、すなわちリチウムイオン電池の製造において最も不可欠な金属で、その需要は指数関数的に増えています。
塩湖のかん水(アルカリ塩水)と鉱石が主なリチウムの天然資源で、そのほとんどが豪州・チリ・アルゼンチン・中国で採掘・生産されています。また天然資源の乏しいわが国は、いわゆる都市鉱山と呼ばれる回収したリチウムイオン電池を資源として再利用することを促進しています。
リチウムの抽出に利用されるイオン交換樹脂とキレート樹脂
かん水を蒸発濃縮して得られた塩からリチウムを抽出方法は、低コストですが数年単位の時間がかかります。このため、かん水から直接リチウムを抽出・精製する技術(Direct Lithium Extraction, DLE)により、短時間で高い回収率、かつ環境負荷の低い生産方法が開発されています。イオン交換樹脂やキレート樹脂は、DLE技術のうちリチウム以外の不純物を抽出液から除去するための精製プロセスに採用されています。
抽出液に含まれるカルシウム・マグネシウムはキレート樹脂(Puromet™ MTS9300)により除去できます。沈殿法ではカルシウム濃度は50ppm程度までしか低減できませんが、キレート樹脂では5ppm程度まで除去することが可能です。
微量ホウ素はホウ素除去用樹脂Purolite® S108により、1ppm以下に低減することができます。
コア・シェル型の強酸性カチオン交換樹脂(Shallow Shell™ SSTC60)やキレート樹脂(Puromet™ MTS9300)をアルミニウム形にイオン変換した樹脂に抽出液を通すことで、液中のフッ化物イオンがアルミニウムと結合して溶解度の低いフッ化アルミニウムを生成して樹脂に固定されるため、抽出液からフッ素を除去することができます。
リチウムのリサイクルと回収
リチウム電池等のリサイクル・回収工程では、リチウムだけでなくコバルト、ニッケルなどの重金属の分離・回収も求められます。このプロセスでは特定の金属と高い親和性を示す溶媒を含浸したキレート樹脂(Puromet™ MTX7010・Puromet™ MTX8010)が活躍します。
Purolite® MTX7010はD2EHPAを含浸し、硫酸溶液から亜鉛・カルシウムを選択的に交換するため、液中のコバルトやニッケルの純度を高めることができます。またPuromet™ MTX8010は亜鉛とコバルトの選択性が高いBis-(2,4,4-trimethylpentyl) phosphinic acidを含浸しており、コバルトとニッケルを効率的に分離することができます。