意外と知らない●地球の気候を左右する火山噴火と海洋プランクトン

宇宙から撮影された地球の表面には、青い海と緑や茶色の陸地が、白い雲に覆われている様子が伺えます。漆黒の宇宙空間に美しく映える地球が、そこに棲むすべての生物にとってかけがえのない存在であることを、改めて認識させてくれます。

 

雲の核となるエアロゾル粒子

地球表面の約60%を覆っている雲は、太陽から地球に注がれる日射の20%を反射しており、その色や量が地表の気温を左右することが知られています。雲は、雲粒と呼ばれる細かい水や氷の粒が集まって構成されていますが、雲粒ができるためには大気中の水蒸気を凝結させる核になるものが必要です。このとき、大気を漂う細かい粒子が、雲粒の元になる核として大切な役割を担っています。

液体や固体の微粒子が大気に分散している状態をエアロゾルと呼び、これに相当する微粒子をエアロゾル粒子と呼びます。エアロゾル粒子の直径は、およそ0.001~10マイクロメートル(1マイクロメートルは1/1000ミリメートル)で、その大きさはどんな過程で生成したかによって決まります。

砂漠の砂塵などが巻き上がった粒子は1マイクロメートル以上の大きい粒子で占められ、数時間から数日で地上に落下します。一方、都市域の大気にはおよそ1マイクロメートル以下の微小粒子が多く含まれていますが、これらは窒素酸化物や硫黄酸化物などの気体が大気中で反応してできた粒子であり、落下しにくいので比較的長く大気中を漂っています。

 

大気中のエアロゾル粒子と気候への影響

このように大気中には、大きさも発生源も漂う時間もさまざまなエアロゾル粒子が混在していますが、実はエアロゾル粒子は地球の気候に大きな影響を与える立役者なのです。

1991年に大噴火したフィリピンのピナツボ火山の噴煙は、大量のエアロゾル粒子と硫黄化合物を伴い、偏西風に乗って10日から二週間で地球を一周しました。その一部は成層圏(高度11~50km)まで達し、噴火から一年かけて地球全体に拡散しました。その間、地表に到達する太陽光が最大で5%減少し、北半球の平均気温が約0.5°C下がったといわれています。ちなみに過去100年間で、地球の気温は世界平均で0.74°C上昇したといわれていますので、火山噴火による寒冷化がいかに短期間で劇的に起こったかが、この事例から理解することができます。

ただし大規模な火山噴火が発生しても気温低下はその後1-2年ほどしか継続しないので、人間活動による二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減する努力は続けていくことは必要です。二酸化炭素はアミン類で固定できるため、アミンを官能基とする弱塩基性アニオン交換樹脂は、高い効率で大量の二酸化炭素を吸収・固定することができます1)

 

海洋プランクトンと気候への影響

ところで、植物や微生物の活動も地球の気候に大きな影響を及ぼすことが、過去の研究で示唆されています。

硫化ジメチルと呼ばれる揮発性の硫黄化合物が、海洋プランクトンから盛んに放出されていることが、1980年代に英国の科学者ラブロック博士(J.E. Lovelock2))によって発見されました。大気に放出された硫化ジメチルが雲の形成に関与していることも博士は指摘し、これは大気・気候分野だけでなく、地球規模の物質循環や収支の研究領域にも影響を及ぼしました。

博士は、地球がそれ自体が一つの生命体であるとする「ガイア仮説」を唱えたことでその名を馳せ、「地球上の生命が、地球の気候と大気組成を、生きていく上で最適な状態に調整し維持している」と提唱しました。海のプランクトンが放出する硫化ジメチルの発見が、まさにガイア仮説の根拠となっているのです。

すなわち、海水の温度が上がって植物プランクトンなど海洋生物の活動が活発になると、硫化ジメチルが大気に盛んに放出され、これが雲を増やすため日射が遮られ、地表や海洋表面を冷やす効果をもたらすのです。この仮説が正しいとすれば、海のプランクトンは、長い地球の歴史の中で地球の気温を安定させ、自らを含めてあらゆる生物が生き延びる環境に調節するシステムを創りだしたのかもしれません。


1) 当社ウエブサイト参照:課題の解決方法を提案します★炭酸ガス吸着用イオン交換樹脂のご紹介 <https://www.purolite.co.jp/2017-09-22-2847>
2) ラブロック博士は2022年7月に103歳で永眠されました。