課題の解決方法を提案します★水中の有機物を効率的に除去するオーガニック・スカベンジャー樹脂のご紹介

有機物の除去

河川水・湖沼水は産業用途の大切な水資源ですが、これらの天然水にはフミン酸やフルボ酸などの多くの溶解性有機物が含まれており、着色や濁度が高い原水ほど高い濃度で溶解しています。これらの溶解性有機物は、飲料水やプロセス用水の水質を直接的に悪化させる要因になるばかりでなく、例えばイオン交換樹脂を用いた軟水装置や脱塩装置においてはイオン交換樹脂そのものを汚染して性能低下を誘発するものであるため、前処理等で除去する必要があります。

一般的には安価で入手し易い活性炭が用いられることが多いのですが、活性炭は強度が乏しく通水中に破砕物や粉砕物がリークして後段に影響するなど、二次的な問題も発生します。そのため、強度の高い合成樹脂を活性炭の替わりに用いると、破砕物の無い安定した処理水を得られることが期待されます。

 

オーガニック・スカベンジャー樹脂

特殊なマクロポーラス構造を有したオーガニック・スカベンジャー樹脂と呼ばれる強塩基性アニオン交換樹脂、Purolite® A502PやPurolite® D5069、Purolite® A860は、この用途に適しています。

表1 Purolite® A502Pの一般物性

ポリマー種別および母体 マクロポーラス型・スチレン系
外観 淡黄白色不透明球状
官能基 Ⅰ型 4級アンモニウム基
イオン形(出荷時) Cl
見掛密度(概算値) 655 – 695 g/l
水分含有率(Cl形として) 66 – 72%
膨潤率(Cl形→OH形) 25%以下
比重(Cl形、湿潤樹脂) 1.04
総交換容量(Cl形) 0.85 eq / l – 湿潤樹脂 以上
粒度範囲 300 – 1,200μm
耐用温度(Cl形) 100℃ (OH形は60℃)
有効pH範囲 0 – 14

表2 Purolite® D5069の一般物性

ポリマー種別および母体 マクロポーラス型・スチレン系
外観 淡黄白色不透明球状
官能基 Ⅰ型 4級アンモニウム基
イオン形(出荷時) Cl
水分含有率(Cl形) 50 – 60%
総交換容量(Cl形) 1.2eq / l – 湿潤樹脂 以上
粒度範囲 300 – 1,180μm
耐用温度(OH形) 100℃ (OH形は60℃)
有効pH範囲 0 – 14

表3 Purolite® A860の一般物性

ポリマー種別および母体 マクロポーラス型・アクリル系
外観 球状
官能基 Ⅰ型 4級アンモニウム基
イオン形(出荷時) Cl
見掛密度(概算値) 680 – 730 g/l
水分含有率(Cl形) 66 – 72%
膨潤率(Cl形→OH形) 20%以下
比重(湿潤樹脂) 1.08
総交換容量(Cl形) 0.8eq / l – 湿潤樹脂 以上
粒度範囲 300 – 1,200μm
耐用温度(OH形) 40℃
有効pH範囲 0 – 14

 

運転方法について

オーガニック・スカベンジャー樹脂は、それぞれを単独で使用しても良いが、例えば汎用的な並流再生方式で、上層にA860、下層樹脂にA502PやD5069とした複層方式で使用することもできます。また、例えば軟化装置等では強酸性カチオン交換樹脂層の上に、これらのオーガニック・スカベンジャー樹脂を積層したアニオンキャップ方式も適用できます。

通液条件を適正化することで、およそ60~80%の有機物が除去可能ですが、非可逆性の有機物汚染が進行すると除去性能は低下します。また再生サイクルや洗浄が不適切な場合には劣化が著しく早まるため、注意が必要です。一般的な通水速度はSV=8~16/hが推奨されますが、原水水質や樹脂塔デザインによって最適値に設定する必要があります。

 

再生方法について

一般的には水酸化ナトリウム溶液を再生剤に使用しますが、次工程に悪影響を及ぼす場合には、塩水での再生を行います。ただし塩水再生では樹脂層からの有機物脱離性が低下しやすいため、脱離性が低下した場合には水酸化ナトリウム溶液や次項記載のアルカリ塩水等を使用することで、脱離性を回復できることがあります。

再生工程は逆洗から始めますが、逆洗時の樹脂層の展開を鑑みて、樹脂層上部には樹脂層高さの50%相当のフリーボード(空間)が必要です。十分なフリーボードを設けることで樹脂が展開しやすくなり、残った懸濁物質が除去され、再生剤との接触効率を向上できます。再生後は、脱塩水などの清浄な水をSV=2~4/hで1~2BV量の押出を行い、続いて4~8BVのリンスを行います。

<再生剤の例>

  • 水酸化ナトリウム溶液使用時:  160g-NaCl/L + 32g-NaOH/L→10%濃度溶液とする。
  • 塩水のみ使用時: 250~300g-NaCl/L→10%濃度溶液とする。
  • 再生剤流速: SV=2~4/h

再生後、樹脂のイオン形はCl形になっているため、通液によって、例えばHCO3-、NO3-、HSO4-などの原水に含まれる他のイオン形に転換されます。また水酸化ナトリウム溶液の調製時に、NaClと水酸化ナトリウムが十分に混合されていない場合は、樹脂イオン形にOH-形が幾分か残存するため、処理水pHが高くなり、樹脂層に沈殿物を発生させる懸念があります。この様な懸念が心配される場合においては、塩水のみで再生処理をします。

 

汚染樹脂のアルカリ塩水回生処理

アルカリ回生処理は、塩水のみの再生を継続して樹脂の有機物除去性能が低下した場合に効果を発揮しますが、樹脂の汚染が顕著な場合には十分な回生効果を得られない場合があります。

手順としては、まず標準的な逆洗を行った後にアルカリ塩水(10~12%塩水と2%の水酸化ナトリウム溶液の混合溶液)をSV =2/hで通液します。2BV目が完了した時点でアルカリ塩水をそのまま樹脂層に残留させて、4時間以上(可能であれば1晩)浸漬させます。この後3BV目の回生剤をSV=2/hで通液し、押出リンスを行います。このとき水酸化ナトリウム溶液は35℃程度が好ましく、さらに樹脂をアルカリ塩水に浸漬中にエアバブリングを行うことで除染効果が高まります。また回生処理に続けて、通常の再生処理を施すことで、さらに高い有機物除去効果が得られます。