意外と知らない●キレート樹脂の特徴と応用分野

キレート作用とキレート樹脂

「キレート作用」とは、特異的なイオン交換基を有する分子が、水溶液の金属イオンと強固に結合する現象を言います。

金属と結合する分子を配位子と言い、2つの配位子が金属イオンと結合する様子が、カニがハサミで何かをつかむ様子に似ていることから、カニのハサミを意味するラテン語“Chela”を語源とした言葉です。キレート作用をもつイオン交換基を、母材となる多孔性高分子(直径約0.3~1.4mmの粒径を持つ、ほぼ球状の粒子(ビード))に固定したものを、一般的に「キレート樹脂」と言います。

 

キレート樹脂の特徴

錯体の形成

キレート樹脂の最大の特徴は、特定の金属イオンと強く結合して化合物を形成することです。

形成された化合物を「錯体」といいます。配位子に窒素(N)、硫黄(S)、酸素(O)、リン(P)のような電子供与元素が2個以上含まれていると金属イオンと強く引合うことで錯体を形成しますが、溶液のpHが変化すると引き合う強さが変わる傾向があります。

つまり水溶液のpHを最も適した値に調整すれば特定の金属イオンと錯体を作り易く、また一度形成した錯体は水溶液の液性に変化がなければ、再び金属を放出することはありません。

水中に数種類の金属イオンが溶解している場合、その中でも特定の金属イオンと錯体をつくる傾向があり、これを特定の金属イオンに対して選択性が高いといいます。数ppm程度の微量金属イオンが溶けている飽和食塩水のように非常に濃度差の大きい条件であっても、キレート樹脂は食塩の妨害を受けずに目的の微量金属イオンと安定した錯体を形成させることができます。

薬液による再利用

一般的なイオン交換樹脂と同じく、薬液によって再生して再利用できることも、キレート樹脂の特徴です。

多くの場合は塩酸や硫酸などの酸溶液を樹脂に通すことで、錯体を形成していた金属イオンを溶離させて除き、その後水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液を通すことで、再利用・繰り返し使用が可能になります。

 

キレート樹脂の応用分野

選択性の高い特定の金属イオンと結合し、一度結合したらなかなか放出しない特性と、更に再生できる特徴を活かして、キレート樹脂はあらゆる分野に応用されています。

廃水から水銀のような有害金属だけを除去して無害化できますので、例えば有害金属の排水規制値(濃度)を達成させるために、排水処理プロセスの最後の工程(河川・海域に放流する直前)にキレート樹脂が使われ、水環境を守るために貢献しています。

また、廃棄物を処理した後の廃水に含まれる価値の高い貴金属やレアメタルだけをキレート樹脂で捕集することで、有用な金属資源を回収して再利用することにも役立っています。

 

キレート樹脂の選択性

キレート樹脂の配位子にはさまざまなものが有りますが、イミノジ酢酸が最も多く使われています。水溶液のpHが中性で、なおかつ金属濃度が低い溶液を想定した場合に、下記の選択性を示します。

最も高い選択性を示す水銀が最も結合しやすく、以下、銅・鉛・ニッケル・亜鉛・カドミウム・コバルト・鉄・マンガンなど、いわゆる重金属がその後に続きます。

イミノジ酢酸の選択性:
Hg2+ > Cu2+ > Pb2+ > Ni2+ > Zn2+ > Cd2+ > Co2+ > Fe2+ > Be2+ > Mn2+ > Ca2+ > Mg2+ > Sr2+ > Ba2+ >> Na+, K+

 

イミノジ酢酸型キレート樹脂の金属錯体
イミノジ酢酸型キレート樹脂の金属錯体

「<strong>キレート樹脂</strong>」の製品ページはこちら