砂糖を作るために活躍するイオン交換樹脂
身の回りの食品に様々な形態で使われている砂糖。
中世には高級な嗜好品であり、金銀と同じような価値を持っていましたが、18世紀以降量産化が進み、家庭でも普通に消費されるようになりました。
現在、年間1人あたりの消費量は、日本では19 kg、世界的には25 kg弱という、想像を超える砂糖が消費されていることをご存知でしょうか。
砂糖の白さは純度の高さ
砂糖の原料となるのはサトウキビや甜菜(てんさい、サトウダイコン)を始め、ジャガイモやトウモロコシのようなデンプン質を豊富に含む植物からも製造されます。
今でこそ、家庭用の砂糖では黒糖などミネラル分や有機物を含んだものが健康に良い、という話が広まっていますが、本来の砂糖は純度が高いほど白くなります。ですから調味料として、また加工食品や飲料に使われる砂糖は、不純物のない、真っ白な砂糖が求められるのです。
従って、これらの植物から砂糖を精製するときには、植物が含む様々な砂糖以外の物質を除去しなくてはなりません。ここで、イオン交換樹脂が活躍します。
砂糖の精製で活躍するイオン交換樹脂
砂糖は、サトウキビや甜菜に含まれるショ糖を糖液として抽出し、イオン交換樹脂で処理することで精製されていきます。
イオン交換樹脂が使われる工程は、主に 「 軟化 」 「 脱塩 」 「 脱色 」 の3つに分けられます。
「軟化」は水の軟水化処理と同じく、糖液に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの金属イオンを強酸性カチオン交換樹脂で処理することによって取り除きます。
「脱塩」「脱色」には強塩基性アニオン交換樹脂が主に用いられます。
糖液にはアミノ酸などの窒素化合物、グルタミン酸系化合物、フラボノイドやタンニンなどのポリフェノール、フミン質と呼ばれる分子量の大きな腐植物質が含まれていますが、これらもイオン交換樹脂で取り除くことができます。
もしこれらを取り除かなかった場合、精製工程や食品に加工する際に意図しない色の変化を生じたり、味に雑味が増えてしまったりと、質の悪い砂糖になってしまうのです。
<主な砂糖の種類(資料:農林水産省)>
転化糖や異性化糖にも
砂糖の精製以外でもイオン交換樹脂を使うことがあります。その一つがショ糖をブドウ糖と果糖に加水分解して甘みを増した、転化糖の製造です。
転化糖は蜂蜜やジャムが出来る過程で、果実中などに含まれる天然の酸の効果で生じる加水分解によって作られるのですが、これと同じ作用をもつ強酸性のカチオン交換樹脂で処理することで、転化糖を作ることができます。
また、デンプン質から作られる異性化糖というものがあります。これはデンプン質から得られるショ糖に対して酵素を作用させ、ブドウ糖を果糖など他の糖に変えて甘みを増加させた糖です。ここでも精製でイオン交換樹脂が使われます。
製糖会社の精製方法によって、上記以外にも弱酸性カチオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂が用いられることもあり、イオン交換樹脂は砂糖の製造に欠かせないものなのです。
「<strong>糖類・甘味剤・有機酸</strong>」の産業分野ページはこちら