意外と知らない●イオン交換樹脂

「イオン交換樹脂」とは?

ナトリウムイオンや塩化物イオンに代表される液体中の 「 イオン 」 を、 「 交換 」 することができる 「 樹脂 」 を 「 イオン交換樹脂 」 と呼びます。

イオンを交換する機能は自然界にも見られます。農作地で土にまいた肥料や栄養素が雨でもすぐに流れ出ずに留まっているのは、イオン交換によって栄養素 ( 主にアンモニア・リン酸・カリウム ) が土 ( 粘土 ) にしっかり結合しているからなのです。

産業の発展においてもイオン交換は大きな役割を担ってきましたが、粘土鉱物など天然の無機物はもろくて扱いにくいため、人工的に合成した 「 樹脂 」 にイオン交換機能を与え、これが水処理や塩の製造など幅広く利用されてきました。

一般的には粒状の合成樹脂 ( 母材 ) にイオン交換機能 ( 官能基 ) を与えたものを 「 イオン交換樹脂 」 と呼びます。ここでも粒状のイオン交換樹脂について話をすすめます。

 

イオン交換樹脂の外観

イオン交換樹脂の母材となる合成樹脂は多孔性の高分子で、直径約0.3~1.4mmの粒径を持つ、ほぼ球状の粒子 ( ビード ) です。

ビードの表面や内部には多くの細孔があり、細孔の径が小さい 「 ゲル型 」 と細孔の径が大きい 「 マクロポーラス型 」 に分類されます (図1)。

ゲル型のビードは光を通しますが、マクロポーラス型は内部にある細孔が光を乱反射させるため、外観上は透明では無く乳白色です。

母材の材料は、スチレンを重合材料のモノマーとして用いるスチレン系共重合体のほか、アクリル酸・メタクリル酸を用いるものがあります。いずれもジビニルベンゼン ( DVB ) と呼ばれる架橋剤を使って、共重合体の球体を形成します。

bead図1:イオン交換樹脂 ( 左:ゲル型 右:マクロポーラス型 )

 

イオン交換現象

イオン交換樹脂の官能基にはあらかじめイオンが備わっていますが、官能基とより親和性・選択性の高い液体中に存在するイオンと入れ替わる性質があります。これがイオン交換現象です。

イオン交換は官能基のイオン全量が入れ替わるまで理論的には持続し、このイオンの 量を全交換容量と呼び、単位樹脂量当たりの当量 ( eq/L-resin ) として表されます。しかし実際に使用する場合の交換容量はこれより小さくなります。交換容量は樹脂の性能を把握するためのもっとも大切な指標ですが、使用 条件 ( たとえば樹脂の劣化や温度など ) で変わります。

 

イオン交換樹脂の特徴

一度交換したイオンを、交換する前のイオンに再び戻して繰り返し使用できることは、イオン交換樹脂の最大の特徴です。これを 「 再生 」 と呼びます。また液体中に混在するさまざまなイオンから、特定のイオンだけを優先的に補足できることを 「 選択性 」 と言い、これもイオン交換樹脂の大きな特徴です。

このように、イオン交換樹脂の性質は母材や官能基の種類によって様々です。つまり、捕まえたいイオンの種類によって、適したイオン交換樹脂を選択することになるわけですが、この辺りの話は長くなるので別の機会に。実際にイオン交換樹 脂を利用する際には、カラムと呼ばれる円筒形の容器等に充填し、ここに液体を通して出てきた処理液を回収する方法をとります。

 

イオン交換樹脂の用途

イオン交換樹脂の用途は、

  • 硬度を除去することによる硬水の軟化処理
  • 半導体・液晶製造プロセス等に使われる純水・超純水の製造
  • ショ糖や水飴などの糖類の脱色・脱塩
  • アルコールや油脂の精製
  • アミノ酸・ビタミン・抗生物質などの抽出・精製
  • 排水中の金属の分離・回収

などがあり、多方面の産業プロセスで活躍して、日本の産業を支えています。